ものづくり補助金の申請の中で中心的な役割を果たすのが「付加価値額」です。
事業計画を策定する際も要件の中に付加価値額が含まれており、理解しなければならない重要な要素の一つです。
しかし、「付加価値額の正確な意味」「その計算方法や算出根拠」について疑問を持っている企業も少なくありません。
そこで本記事では、ものづくり補助金における付加価値額の概念、計算方法、及びその重要性について詳しく解説します。
ものづくり補助金には付加価値額の要件がある
ものづくり補助金には基本要件として、下記の通り付加価値額の要件が設定されています。
事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年平均成長率 3%以上増加させること。
この通り、事業計画において付加価値額を3%以上上昇させる必要があります。
そのため、ものづくり補助金における付加価値額という概念をしっかり理解しておく必要があります。
付加価値額の定義
ものづくり補助金における付加価値額とは、「営業利益」「人件費」「減価償却費」の合計額を指します。つまり、付加価値額とは実質的な事業の利益と考えるのが良いかと思われます。
その中でも特に判断が迷いやすい「人件費」や「付加価値額の計画未達時の取り扱い」について解説していきます。
人件費の範囲
一般的に人件費の考え方は下記の通りです。
【法人】
・売上原価に含まれる労務費(福利厚生費、退職金等を含んだもの。)
・一般管理費に含まれる役員給与、従業員給与、賞与及び賞与引当金繰入れ、福利厚生費、退職金及び退職給与引当金繰入れ
・派遣労働者、短時間労働者の給与を外注費で処理した場合のその費用
ただし、これらの算出ができない場合においては、平均給与に従業員数を掛けることによって算出してください。
【個人事業主】
青色申告決算書(損益計算書)上で以下の費目が人件費に該当します(丸数字は、所得税申告決算書の該当番号です)。
福利厚生費+給料賃金(⑲+⑳)
※個人事業主の付加価値額算定では、人件費の構成要素である㊳専従者給与(=ご家族の方等のお給料)および㊸青色申告特別控除前の所得金額(=事業主個人の儲け)の2項目を「人件費」に参入せずに計算します。
法人の場合、給与だけではなく、福利厚生費、退職金、賞与、派遣などの外注費も対象となります。
付加価値額未達成時の取り扱い
付加価値額の目標に達成しなかった場合でも、原則として補助金の返還義務はありません。ただし、事業計画の達成に向けた誠実な取り組みが求められます。
付加価値額の目標達成
事業計画書では、3~5年の間に付加価値額を年率3%または5%増加させる目標を設定する必要があります。この目標達成は、補助金申請の可否に直接影響するため、非常に重要です。
従業員の解雇を通じての付加価値額達成は不可
従業員の解雇を通じての付加価値額達成は不採択となります。
ものづくり補助金の公募要領の中に下記の通り記載があります。
1-2-2補助対象外となる事業
主として従業員の解雇を通じて、要件や目標の達成のために付加価値額等を操作させるような事業
付加価値額の計算方法、算出根拠
それでは実際に付加価値額をどのように計算、算出すれば良いのかを事業再構築補助金の採択事例を参考にしながら、解説していきます。
(事業再構築補助金 採択事例 株式会社八芳園)
売上高と営業利益においては、別途の収益計画から数字を引用しているケースが多いです。
収益計画の算出根拠や策定方法は下記の記事を参考にしてみてください。
https://mono-support.com/saikouchiku/budget-plan/
人件費においては前年度の人件費に1~2%をプラスして算出しています。
新しい事業を行う場合、人を増やすのか、配置異動によってカバーするのか、従業員の質を高めてカバーするのかを明記した方が良いでしょう。
減価償却費においては別紙の資料で取得予定資産の一覧を明記し、それぞれ法定耐用年数を調べて償却しています。
(事業再構築補助金 採択事例 有限会社市場印刷)
こちらの事業計画書も同様に、別途の収益計画から数字を引用しています。
売上高の算出方法は事業計画書を策定する上でも重要なので、しっかりとページ数を使って根拠をもって解説することをおすすめします。
人件費は過去の実績値をベースに作成しています。
このように過去の実績値をベースにして数字を作成するというのも、事業計画を策定する上では重要と言えるでしょう。
まとめ
今回はものづくり補助金における付加価値額の定義や計算方法、算出根拠について解説してきました。
ポイントをまとめると下記の通り。
- 付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したもの
- 人件費は給与だけではなく、福利厚生費、退職金、賞与、派遣などの外注費も対象
- 付加価値額の算出根拠や計算方法は採択事例を参考に
- 付加価値額未達成でも原則ペナルティなし
付加価値額は、ものづくり補助金の申請において中心的な役割を果たします。その定義、計算方法、及び算出根拠を正しく理解し、事業計画書に反映させることが、補助金の採択に向けた重要なステップです。
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