ものづくり補助金は、個人事業主の方でも申し込みをすることが可能です。補助金額が1,000万円と高めになっているため、利用できれば更なる事業展開に役立てることができます。そこで、気になる採択率や採択事例についてご紹介するので、参考にしてみてください。
ものづくり補助金の個人事業主の採択率は?
ものづくり補助金の採択率は残念ながら高いとはいえず、おおよそ6~10%程度とされています。公募によっては8%程度になることもありますが、4%台の採択率となった公募もあるため、個人事業主のものづくり補助金採択率はかなり低いと考えておいたほうが良いでしょう。
例えば、平成21年の1次公募を確認してみると、9,443の業者が採択されたのですが、そのうち個人事業所数は522と、全体の5.5%でした。日本に国内における個人事業主の数は総企業数の半数ほどを占めています。
しかし、近年は少し動きが変わり、令和1年度補正1次公募では全体採択数が1,429であるのに対し、個人事業者数は152、割合としては10.6%となりました。また、平成30年度補正2次公募でも全体採択数が2,063に対し、個人事業所数は200、その割合は全体の9.7%となっています。
このことから、ものづくり補助金全体における個人事業者の割合は少しずつ増えてきている状況です。
採択割合が増えている理由
大きな理由として挙げられるのが、申請条件として給与アップが義務化されたことです。中小企業の中には少額の賃上げでも難しいケースがありますが、申請要件として「給与支給総額年率1.5%以上増加」と、「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上」が定められています。
この条件を満たすことができない中小企業からの申請が減った分、個人事業主の採択率が増えた可能性も考えられるのです。
個人事業主はモノづくり補助金申請において不利なのか?
ものづくり補助金の採択率が低いということは、それだけ中小企業と比べて不利ともいえます。その理由として挙げられるのが、以下の3点です。
技術的能力
技術面に関する審査項目であり、補助事業実施のための体制の他にも技術的能力が備わっているかどうかが評価されるのですが、ある程度大きな規模の企業と比べるとどうしても不利です。
この補助金を受け取るためには、技術力があることをしっかりとアピールしなければなりません。しかもその取り組み内容には革新性が必要とされているのです。
たくさんの社員がいる中小企業では、社員からも意見を募るなどして様々なアイディアを考えることができますが、小規模事業者である個人事業主の場合はこれが難しくなってしまいます。
採択されるためには、一般的ではない新たなサービスや生産方式を取らなければならないため、このあたりも課題です。新しいサービスや生産方式といっても未知のものを作り出さなければならないわけではなく、例えば同業種や近隣地区において他に類似した商品やサービスを提供している事業がなければ認められる可能性が高くなります。
革新性のある取り組み内容を考えることができたとしても、他に課題や目標を明確にすることも求められますし、しっかり計画を立てていかなければなりません。
補助事業実施のための体制
審査項目の中で補助事業実施のための体制が備わっているか評価されるのですが、個人事業主は組織構造を作るのが難しく、不利だといえます。「体制」と言われてもピンとこないかもしれませんが、これは組織でどのようなことを行っているのかを明確に伝える必要があるのです。
しかし、個人事業主の場合は例え革新性のある事業を考えることができたとしても、それを実現するための体制が整っていないケースも多く、机上の空論のように思われてしまう可能性もあります。実効性がないと判断された場合には審査が厳しくなってしまうのです。
財務状況
特に小さな企業は財務状況が時期によって悪くなったり、常に良いとは言えない状態にあったりするケースも多く、このあたりもものづくり補助金の審査で評価が低くなってしまうポイントです。売上が安定している中小企業とは異なり、小規模な個人事業者ほど財務状況が厳しいことが多いといえます。
こういった様々な理由によって、中小企業に比べると個人事業主の採択率が低くなっていると考えられるのです。
個人事業者の採択事例
ものづくり補助金において、実際にどのような業務を行っている個人事業者がどのような内容の事業計画で採択されているのかについて、いくつかを紹介しましょう。
特に個人事業者の採択事例として特に目立つのは歯科医(歯医者)で、採択された企業の個人事業者のうち半数ほど締めています。この割合も年々徐々に高まっており、平成29年度補正1次公募では25%程度しかなかったものの、令和1年度補正1次になると50%を超えています。
採択された事業計画について調べてみると、口腔内スキャナー等の機器類を導入することにより、詰め物や被せ物といったものを内製化する事業計画が採択されていました。他にも、口腔内のデータを一括管理することによって歯科技工物プラットフォームを確立させたり、コロナ禍の状態でも歯科治療を希望する全員を受け入れ可能な体制を確立するための事業計画などが採択されたりしています。
その他の採択事例
歯科医以外では例えば動物病院関係も多いです。事業内容としては審査精度を向上させることにより、高齢化したペットへ高度な検査を可能にする取り組みや、ペットの高齢化に対応するための超低侵襲治療の実現などが挙げられます。
他にも、製造業では海外向け部品の加工や生産性の向上に関する事業が採択されていたり、パン工房では最新のパン製造設備を導入し、合理化と生産性の向上を目指す事業が採択されたりしています。
十分な準備をしてから申請することが重要
ものづくり補助金は中小企業と比べても小規模な個人事業主の採択率は高いとは言えない状況です。しかし、ご紹介したように賃上げ要件などの関係もあって少しずつ採択率は増えているので、必ずしも諦める必要はありません。
採択率をアップさせるためにはできる限り準備を整え、少しでも確率をあげた上で申請するようにしましょう。ものづくり補助金を申請するためには必要な書類などもたくさんあるので、準備に時間がかかることを想定し、早い段階から動き出すことをおすすめします。
ものづくり申請代行サポート(CPA)では、長年、ものづくり補助金の申請サポートを行っており、個人事業主を含む多数の採択実績があります。どんな些細なことでも、お気軽にお問い合わせください。