ものづくり補助金

ものづくり補助金、AIを導入する事業で申請する際の注意点と対策ポイントを解説

ものづくり補助金、AIを導入する事業で申請する際の注意点と対策ポイントを解説


近年、ものづくり補助金ではAI技術を活用した事業が特に高く評価されています。実際、第18次公募の採択事例を見ても、100件以上の事業計画がAIを取り入れており、全体の5%以上を占める結果となりました。AI技術は今後も進化を続け、補助金申請においても重要な要素となることが予想されます。

そこで本記事では、ものづくり補助金でAIを事業に導入する際のメリットと注意点から、ものづくり補助金におけるAI活用の最新事例や、採択を狙うためのポイントを詳しく解説します。

今回の記事の流れ

1.ものづくり補助金概要
2.ものづくり補助金とAI~AI導入のメリットと注意点
3.ものづくり補助金、AI導入の採択事例
4.AI導入事業で「ものづくり補助金」を申請する際に重要なこと
5.もう一度~申請前の確認ポイント
6.まとめ

1.ものづくり補助金概要

中小企業や小規模事業者が、新製品・サービスの開発や生産プロセスの改善を行う際に必要な設備投資を支援する補助金です。生産性向上や競争力強化を目的とし、革新的な取り組みを後押しします。
※正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」

※12/17の補正予算案成立により、2025年の実施も正式に決定しました。

2025年度第19次ものづくり補助金の簡単な概要は下記の通りです。

項目要件
概要①<製品・サービス高付加価値化枠>革新的な新製品・新サービスの開発による高付価値化
②<グローバル枠> 海外事業の実施による国内の生産性向上
補助金額■製品・サービス高付加価値化枠
5人以下750万円(850万円)
6~20人1,000万円(1,250万円)
21~50人1,500万円(2,500万円)
51人以上2,500万円(3,500万円)
■グローバル枠
3,000万円(3,100万円~4,000万円)
※大幅賃上げ特例(補助上限額を100~1,000万円上乗せ。上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。最低賃金引上げ特例事業者、各申請枠の上限額に達していない場合は除く。下記①、②のいずれか一方でも未達の場合、補助金返還義務あり。)
①給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加
②事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準
補助率中小企業:1/2、小規模事業者:2/3、再生事業者(①枠のみ):2/3
最低賃金引上げ特例あり。
その他収益納付は求めない
補助対象経費【共通】機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
【グローバル枠のみ】海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費
基本要件①付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加
② 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
又は給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加
③事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準
④次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)
※最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、基本要件は①、②、④のみとする。※3~5年の事業計画に基づき事業を実施、毎年、事業化状況報告を提出すること(事業成果確認のため)
※基本要件等が未達の場合、補助金返還義務がある

中小企業庁 令和6年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の概要

2025年度第19次「ものづくり補助金」の詳細については以下の記事で詳しくご説明しています。

2025年概要
「ものづくり補助金」2025年(19次公募)最新情報!日程予想と変更点を解説 { "@context": "http://schema.org", "@type": "WebPage", "...

 

2.ものづくり補助金とAI~AI導入のメリットと注意点

AIとは?~ものづくり補助金における「AI」

ここで、改めて「AIとは何か?」について説明します。

AI(人工知能)とは、人間の知的な作業をコンピュータが模倣・自動化する技術のことです。具体的には、データを解析し、パターンを学習(機械学習)することで、判断や予測を行うシステムを指します。

AIはすでに多くの分野で活用されており、画像認識、音声認識、文章生成、ロボット制御など、さまざまな用途で利用されています。ものづくり補助金においても、生産工程の自動化、品質管理の高度化、需要予測の精度向上など、AIを活用した革新的な取り組みが注目されています。実際の採択事例を見ても、第13次公募時点では約50件だったものが、第18次公募では約150件にまで増加しており、AIの活用がますます重要視されていることがわかります。

ものづくり補助金を活用してAIを導入するメリット

まず、AIを事業に取り入れることでどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

1. 人的リソースの有効活用

これまで人が行っていた単純作業や定型業務をAIが代替することで、人的リソースの最適化が可能になります。例えば、データ入力やルーティン作業をAIに任せることで、人材をより高度な業務に集中させることができます。特に、製造現場や倉庫管理ではAIを活用した自動化により、人手不足の解消にもつながります。

2. 生産性向上と利益の最大化

AIは疲労や集中力低下がなく24時間稼働できるため、生産性が向上します。AIによる精密な作業の継続により、ヒューマンエラーを防ぎ作業効率を向上させることが可能になります。また、無駄な作業を削減しインフラコストを抑えることで、利益の最大化を実現できます。

3. データの活用と可視化

AIを導入することで、ビッグデータの分析が容易になります。センサー技術と組み合わせれば、製造工程や作業状況の詳細なデータを収集し、見える化することが可能となり、トラブルの早期発見・生産計画の最適化につながります。ECサイトなどでは、顧客の購買履歴や行動パターンを分析し、最適な商品提案を行うこともできます。

4. 品質管理の向上

AIを検査や品質管理に活用することで、製品の品質を均一化し、精度を高めることができます。人の目では見逃してしまう微細な傷や欠陥も、AIの画像認識技術を用いることで識別可能です。不良品の発生を抑え、顧客満足度の向上にもつながります。

5. 顧客満足度の向上

AIを活用することで、より良い顧客対応が可能になります。例えば、チャットボットを導入すれば、24時間体制で顧客の問い合わせに対応でき、満足度向上につながります。また、AIによるパーソナライズされた商品提案や、製品の異常検知による迅速なメンテナンスを提供でき、顧客の信頼を高めることができるでしょう。

6. 危険回避と安全性の向上

AIは、危険作業の代替や事故の未然防止にも貢献します。建設業や製造業では、AIによる作業支援や監視システムを導入することで、作業員の安全を確保できます。さらに、AIは現場のデータをリアルタイムで分析し、事故のリスクを事前に察知することも可能です。

ものづくり補助金を活用してAIを導入する際の注意点

このようにAIの導入はメリットも多くありますが、同時に注意すべき点もありますので、順にご説明していきます。

1. AIを導入しただけでは補助対象とならない可能性

ものづくり補助金では、単にAIを導入するだけでは補助対象になりません。公募要項では「設備・システムを導入するだけで、製品・サービスの開発を伴わないものは該当しない」と明記されており、補助対象とするためには自社の技術力を活かした革新的な製品・サービスの開発が求められます。この点については、後ほど再度ご説明します。

2. 導入コストの確認

AIシステムの導入には初期投資が必要です。導入初期はコストがかかるものの、適切に運用すれば長期的に見てコスト削減につながります。段階的に計画を立て、効果的に運用していくことが重要です。

3. 専門知識を持つ人材の確保

AIを効果的に活用するためには、ICTやデータ分析に精通した専門人材が不可欠です。しかし、高度なスキルを持つ人材の確保には高額なコストがかかるため、社内で育成することも視野に入れる必要があります。

4. セキュリティ対策の強化

AI導入にはサイバー攻撃や情報漏洩のリスクが伴います。ウイルス対策ソフトの導入、パスワード管理の厳格化、アクセス権限の適切な設定など、セキュリティ対策を徹底することが求められます。ものづくり補助金の公募要項にも「生産性向上をともなえば、製品やサービスのセキュリティ向上のためのソフトウェアを補助対象経費に含められる」と記載があるため、AI導入とともにセキュリティ対策をセットで考えることが重要です。

3.ものづくり補助金、AI導入の採択事例

では、実際にAI技術を活用・導入したどのような事業で、ものづくり補助金の採択に成功しているのでしょうか。特に製造業やサービス業での導入が進んでいます。

1. 製造業におけるAI活用

前章のメリットでもご紹介した通りに、AIの導入によって製造プロセスの効率化や品質管理の向上が可能となっています。

  • AIセンサ付き一軸破砕機の開発
    廃棄物の再資源化工程を高度化するためにAIを活用し、破砕機の性能を向上。これにより、リサイクルの効率が飛躍的に向上し、環境負荷の低減に貢献。
  • AIを搭載した自動検査機の導入
    オーダーメイドのAI員数検査機を導入し、高い脆弱性を持つ三点照合を完全自動化。これにより、品質検査の精度向上と省人化を同時に実現。
  • AI搭載の3D曲面加工設備の開発
    特殊なデザイン家具を製造するためのAI搭載設備を導入し、職人の技術をAIが補助。これにより、デザインの自由度が向上し、生産コストを削減。

2. 業務効率化・DX推進

AIとデジタルトランスフォーメーション(DX)を組み合わせ、業務の効率化を図る取り組みも増加しています。

  • 消防設備点検の自動報告システム
    AIを活用して消防設備の点検結果を自動で報告・申請できるシステムを開発。これにより、点検作業の省力化と正確性の向上を実現。
  • AI活用建設業務スマートDXシステム
    建設業におけるDXを推進し、設計から施工までのプロセスをAIが最適化。従来の紙ベースの業務をデジタル化することで、作業時間の短縮とミスの削減を実現。
  • 需要予測AIによるピッキングシステム
    物流業において、AIが需要予測を行い、受発注データを統合してピッキング業務を最適化。これにより、倉庫の作業効率が向上し、コスト削減にも貢献。

3. AIを活用した新規事業の創出

AIを活用した新たなビジネスモデルの開発もあり、注目されています。

  • AIチャットボットによる訪日観光支援
    訪日中国人観光客向けに、AIチャットボットを活用した自動旅程作成システムを開発。これにより、観光業界のDX化を推進。
  • AI活用ライブコマース支援事業
    AIを活用したチャット機能により、ライブコマースの購買率を向上。ユーザーの興味関心をリアルタイムで分析し、最適な商品提案を行うことで売上増加を実現。
  • AIによる健康状態予測プラットフォーム
    過去の健康データをAIが解析し、健康状態を予測するプラットフォームを開発。予防医療や健康管理の分野で活用され、医療コストの削減にもつながる。

4.AI導入事業で「ものづくり補助金」を申請する際に重要なこと

AIを導入した事業でものづくり補助金の採択を受けるためには、いくつか留意すべき重要な点があります。

1. AI導入の目的を明確にする

AIを活用する際は、単に「AIを導入する」だけでなく、「どのような課題を解決するのか」を明確に示すことが重要です。具体的には、AIをどのように活用し、それが自社の新規事業やDX推進にどのように貢献するのかを詳しく説明する必要があります。

そのためには、以下の3点を明確に記載しましょう。

  1. 必要性:なぜAIを導入するのか、解決すべき課題を明確にする。
  2. 目的:AI導入によってどのような成果を目指すのかを示す。
  3. 手段:目的を達成するために、具体的にどのようにAIを活用するのかを説明する。

事業計画の説得力を高めることが、採択されるためには重要です。

NG例:「AIを導入して業務効率化を図る」

OK例:「従来の手作業では識別できなかった微細な不良品を、AIによる画像解析で99%の精度で検出し、不良品率を30%削減する」

2. 市場ニーズを明確にする

ものづくり補助金の審査では、市場ニーズの有無も重要なポイントとなります。そのため、事業計画の中でAI導入が必要とされる根拠を明確に示すことが求められます。

具体的には、業界の動向や市場の課題、顧客の需要などをデータや調査結果を用いて裏付けることが効果的です。AIを活用することでどのような市場の課題を解決できるのかを具体的に示し、補助金の審査において説得力のある計画を作成しましょう。

OK例:「AIを活用した自動検査システムの導入により、従来の検査時間を50%削減できる。市場調査では、90%以上の製造業が省人化のためのAI技術に関心を持っている。」

3. 成果を定量的に示す

AI導入後の成果を具体的な数値で示すことで、導入後の効果を客観的に証明できます。例えば、AI導入によって業務効率が何%向上したか、コスト削減がどの程度実現したか、あるいは顧客満足度がどれくらい改善されたかなど、成果を数値で示すことが、より具体的な計画として評価されます。

定量的な成果を示すために考慮するべき指標には以下のようなものがあります:

  1. 業務効率(例:作業時間の削減、処理速度の向上)
  2. コスト削減(例:人件費の削減、設備投資の減少)
  3. 売上や利益(例:新規顧客獲得数、リピート率の向上)
  4. 品質向上(例:エラー率の低下、品質の安定)

こうした具体的な数字を提示することで、AI導入のメリットを明確に伝えることができます。

OK例:「AIを活用したピッキングシステムにより、倉庫作業のミスを30%削減し、作業効率を20%向上」

4. 適切な費用計画を立てる

AI導入には、システム開発やデータ収集コストがかかるため、補助金の申請には明確な費用計画が必要です。補助金申請の際には、費用計画が明確でないと審査を通過するのが難しくなります。AI導入にかかる費用を正確に見積もり、その計画を具体的に示すことが求められます。

また、具体的な費用計画には、以下の要素を含めることが大切です

費用項目説明
システム開発費用AIの開発やカスタマイズに必要な費用
ソフトウェアライセンスやサブスクリプションの費用
データ収集・整理費用データ収集やデータクリーニングにかかるコスト
データ整備や分析ツールの導入費用
インフラ整備費用サーバーやクラウド環境の構築費用
セキュリティ対策やバックアップシステムの費用
人材費用AIエンジニアやデータサイエンティストなどの専門職の採用・育成費用
外部コンサルタントを活用する場合の費用
運用・保守費用システム運用のための人員確保やトレーニング費用
定期的なメンテナンスやアップデートにかかる費用

これらの費用を明確にした上で、予算内で実行可能な計画を立てることが大切です。また、AI導入によって得られる効果を費用対効果の観点からも示すことで、補助金の審査が通りやすくなります。

OK例:「AI検査システム開発にかかる費用:500万円(ソフトウェア開発300万円、ハードウェア導入200万円)」

4.もう一度~申請前の確認ポイント

これまでご紹介してきたことをふまえ、AIを導入・活用した事業計画を申請する前に、以下の点を確認することをおすすめします。

申請する際のポイント!
  1. AI導入の目的は明確か?
    何のためにAIを導入するのか、その目的をはっきりさせましょう。
  2. 市場ニーズと競争優位性を説明できるか?
    市場におけるニーズを把握し、自社の競争優位性を説明できるかを確認しましょう。
  3. 補助金の対象経費を具体的に示しているか?
    補助金申請において、対象となる経費を詳細に示すことが重要です。
  4. AI導入後の成果を数値で示しているか?
    AI導入後の期待される成果を、定量的に表現できているか確認しましょう。
  5. AI導入に伴うリスクと対策を明記しているか?
    AI導入にはリスクも伴います。そのリスクを明確にし、対策を講じているかを確認してください。

AIはあくまで目的ではなく、手段であることを十分に意識しましょう。事業の目的を達成するためのツールとして、AIを効果的に活用することが大切です。

まとめ

今回は、ものづくり補助金でAIを活用・導入する事業でのメリットや注意点から、採択されるために注意すべき重要なポイントと対応策などについてご紹介してきました。

AIを活用した事業計画をものづくり補助金で申請する際は、目的を明確にし、市場ニーズや競争優位性を十分に説明できるようにすることが重要です。また、補助金の対象経費や導入後の成果、リスクとその対策についても具体的に示すことが求められます。AI導入はあくまで目標達成の手段であることを意識し、事業全体の戦略に沿った計画を立てることが成功への鍵です。

もし、申請に不安がある場合は、専門家のサポートを受けることで、より確実な申請が可能になります。事務所では、ものづくり補助金を活用したAI導入の申請をサポートしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

ものづくり補助金の申請をご検討中の方は一度ご相談ください。


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駒田会計事務所【コマサポ】 代表 駒田裕次郎 税理士・公認会計士

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