日本の農業は現在、高齢化や人手不足、気候変動といった深刻な課題に直面しています。これらの問題を解決する手段として、AI(人工知能)を活用したスマート農業が注目を集めています。
しかし、最新のAI技術を導入するには高額な設備投資が必要となり、多くの農業経営者にとって大きな負担となるのが現状です。そこで活用したいのがものづくり補助金です。この補助金を活用すれば、AIを取り入れた農業の自動化や効率化にかかる費用を大幅に抑えることができます。
本記事では、ものづくり補助金を活用したAI農業のメリットや申請ポイントについて詳しく解説します。スマート農業への第一歩を踏み出すために、ぜひ参考にしてください!
基礎からわかる、「スマート農業」
スマート農業とは、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ロボット技術などを活用し、農作業を効率化・自動化する次世代の農業のことをいいます。近年では、農業分野においても、先端技術が活用され、生産性の向上をはじめとした多くの
メリットが期待されるようになっています。
スマート農業の主な技術と活用例
具体的には、どのような技術が活用されているのでしょうか。スマート農業の代表的な技術をご紹介します。
農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について」2024年1月
✅ AI(人工知能)
→ ドローンやセンサーを使い、作物の成長状況や病害を自動分析し、最適な施肥や防除を提案。AIで生育予想をし、収穫時期にも反映。
✅ IoT(モノのインターネット)
→ 土壌の水分量や温度、気象データをリアルタイムで収集し、自動で水やりや換気を調整。温度・湿度・CO2濃度などの環境制御の自動管理
✅ ロボット技術・ロボット農機
→ 収穫ロボットや自動運転トラクターを導入し、省力化と作業の均一化を実現
✅ ビッグデータ活用
→ 過去の収穫データや市場動向を分析し、最適な栽培計画を立案。生育予想や収穫時期の判断にも活用。
スマート農業のメリット
- 人手不足の解消:AIやロボットが作業を自動化し、少ない人手で農業を続けられる
- 生産性の向上:データ分析に基づいた栽培で、収穫量アップ&品質向上
- コスト削減:効率的な管理で無駄を減らし、農業経営を安定化
スマート農業は、まさに次世代の農業モデルといえます。しかし、AI技術を導入するには多額の初期投資が必要で、中小規模の農業法人や個人農家にとっては大きな負担となることが少なくありません。そこで活用したいのが、国の「ものづくり補助金」です。
ものづくり補助金概要
ものづくり補助金について、あらためて簡単に説明いたします。
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が、新製品・サービスの開発や生産プロセスの改善を行う際に必要な設備投資を支援する補助金です。生産性向上や競争力強化を目的とし、革新的な取り組みを後押しします。
※正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」
2025年度第19次ものづくり補助金の簡単な概要は下記の通りです。
項目 | 要件 |
概要 | ①<製品・サービス高付加価値化枠>革新的な新製品・新サービスの開発による高付価値化 ②<グローバル枠> 海外事業の実施による国内の生産性向上 |
補助金額 | ■製品・サービス高付加価値化枠 5人以下750万円(850万円) 6~20人1,000万円(1,250万円) 21~50人1,500万円(2,500万円) 51人以上2,500万円(3,500万円) |
■グローバル枠 3,000万円(3,100万円~4,000万円) | |
※大幅賃上げ特例(補助上限額を100~1,000万円上乗せ。上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。最低賃金引上げ特例事業者、各申請枠の上限額に達していない場合は除く。下記①、②のいずれか一方でも未達の場合、補助金返還義務あり。) ①給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加 ②事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準 | |
補助率 | 中小企業:1/2、小規模事業者:2/3、再生事業者(①枠のみ):2/3 ※最低賃金引上げ特例あり。 |
その他 | 収益納付は求めない |
補助対象経費 | 【共通】機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 【グローバル枠のみ】海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費 |
基本要件 | ①付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加 ② 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上 又は給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加 ③事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準 ④次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ) ※最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、基本要件は①、②、④のみとする。※3~5年の事業計画に基づき事業を実施、毎年、事業化状況報告を提出すること(事業成果確認のため) ※基本要件等が未達の場合、補助金返還義務がある |
(中小企業庁 令和6年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の概要)
2025年度第19次「ものづくり補助金」の詳細については以下の記事で詳しくご説明しています。

広がるスマート農業へのAI活用~社会における実践例
「スマート農業をめぐる情勢について」という農林水産省の資料では、スマート農業技術の研究開発や社会実装の取組、活用に向けた施策について詳しく紹介されています。
土壌病害診断アプリ「HeSo+」
項目 | 内容 |
---|---|
開発者 | 農研機構、東京農業大学など |
概要 | 土壌微生物による発病リスクを栽培前に診断するAIアプリ。全国14道県で実証試験を行い、7,000件以上のデータを収集。10種類の土壌病害の発生リスクを診断し、適切な対策を提示。 |
導入メリット | 1. 熟練指導者がいなくても土壌病害の管理が可能に。2. 生産者と指導者の新たなコミュニケーションツールとして活用。3. 土壌消毒剤の使用量削減が期待できる。 |
関連団体 | HeSoDiM-AI 普及推進協議会(公式サイト) |
2. 病害虫診断アプリ「レイミーの病害虫雑草AI診断」
項目 | 内容 |
---|---|
開発者 | 農研機構、法政大学、(株)ノーザンシステムサービス、(株)NTTデータCCS、日本農薬(株) |
概要 | AIを活用し、スマートフォンで撮影した画像から病害虫を自動診断するアプリ。トマト、イチゴ、キュウリ、ナスなど19作物の病害虫診断が可能。 |
導入メリット | 1. 新規就農者や未熟練者でも病害虫の早期発見が可能。2. 迅速な診断・対応により、被害を最小限に抑制。3. スマートフォンで簡単に利用でき、現場での診断が効率化。 |
開発支援 | 「革新的技術開発・緊急展開事業(H28〜R2)」「戦略的スマート技術の開発・改良事業(R3)」 |
3. キャベツ自動収穫機
項目 | 内容 |
---|---|
開発者 | 立命館大学、農研機構、オサダ農機(株)、ヤンマーホールディングス(株) |
概要 | AIがキャベツを認識し、自動収穫を実施。収穫後のコンテナ収納や交換も自動で行う。 |
導入メリット | 1. 収穫作業の省力化:従来は5〜6名で20時間以上/10aかかっていた作業を、1名で20時間以内に短縮。 2. 収穫機の無人化により、新規就農者の参入が容易に。 |
4. ピーマン自動収穫ロボット
項目 | 内容 |
---|---|
開発者 | AGRIST(株) |
概要 | AIで収穫適期のピーマンを判定し、自動収穫するロボット。ハウス内のワイヤ上を移動し、夜間も稼働可能。 |
導入メリット | 1. 夜間収穫により、全収穫量の約2割をカバー。 2. 着果負担の低減により病害虫を抑制し、収量増加に貢献。 3. 収穫作業と同時にカメラで植物を撮影し、AIによる病害虫の早期発見や収穫量の予測が可能。 |
受賞歴 | 第10回ロボット大賞(2022年 農林水産大臣賞) |
「ものづくり補助金」スマート農業における採択事例
では、先ほどの社会での動きも参考にしつつ、ものづくり補助金を活用し、スマート農業を導入した具体的な事例を紹介します。補助金を活用することで、どのようにAI技術やIoTを取り入れ、生産性向上や作業効率化を実現したのかを詳しく見ていきましょう。
Case1:IoT・AIを活用した環境制御による農業ビジネスモデルの構築
農業の現場では、温度や湿度、光量といった環境要因が作物の生育を大きく左右します。本事例では、AIとIoTを活用した環境制御システムを導入し、リアルタイムでデータを分析・調整することで、最適な栽培環境を実現しました。その結果、収量の増加や品質の向上が図られ、安定した農業経営につながる取り組みが進められています。
期待される成果は?
- ハウス内の温湿度やCO2濃度を自動制御し、生産性を向上
- AIのデータ分析により最適な施肥や灌水を実施
- 労働力不足の解消と作業の省力化を実現
Case2:緑肥有機栽培のスマート農業化による学校有機給食事業への展開
近年、学校給食における有機農産物の需要が高まっています。しかし、有機農業は天候や土壌環境の影響を受けやすく、安定供給が課題となっています。本事例では、緑肥を活用した有機栽培にスマート農業技術を導入し、生産の効率化と安定供給を実現しました。
期待される成果は?
- 土壌センサーやAIを活用し、土壌の健康状態をリアルタイムで管理
- 生産性を高め、安定した有機農産物の供給を実現
- 学校給食への安定供給を通じて、新たな市場開拓に成功
Case3:スマート農業技術を活用したブランド芋の開発と輸出の強化
高品質なブランド農産物の開発と販路拡大を目指し、スマート農業技術を導入した事例です。特に、市場ニーズの高いブランド芋の生産を効率化し、品質を安定させることで国内外への輸出を強化しました。
期待される成果は?
- AI分析による最適な栽培管理で品質を向上
- ドローンを活用した生育モニタリングで効率的な管理を実施
- 収穫後の品質保持技術を導入し、海外市場へ輸出を拡大
Case4:農福融合の可能性を切り拓く「新しいスマート農業管理システム」の構築
農業分野において、障がい者や高齢者が活躍できる環境づくりが求められています。本事例では、AIを活用したスマート農業管理システムを導入することで、農福連携(農業と福祉の融合)を推進しました。
期待される成果は?
- 簡単な操作で作業管理ができるシステムを開発
- 障がい者や高齢者でも農業に従事しやすい環境を整備
- 労働力の確保と社会貢献を両立
まとめ
今回は、AIを活用したスマート農業と、それに関連するものづくり補助金の活用について解説しました。以下に、要点をまとめます。
『スマート農業』=AI、IoT、ロボット技術などの先進的な技術を駆使して、農作業の効率化や品質向上を目指す次世代の農業モデル
⇒これを支援するものが「ものづくり補助金」(中小企業や農業法人の技術導入をサポートするための重要な助成金制度)
【利用可能な具体例】
環境制御技術、病害虫診断アプリ、自動収穫機など、さまざまなスマート農業関連技術の導入
⇒初期投資の負担を軽減し、作業効率の向上や人手不足の解消が期待される
申請の際には、事業の付加価値向上や賃上げ計画を明確にし、補助金の趣旨に沿った内容で申請書を作成することが重要!
AIを活用した農業は、今後の農業分野でますます注目されるテーマです。ぜひ、ものづくり補助金を活用して、スマート農業をさらに推進していきましょう。
また、もし、申請に不安がある場合は、専門家のサポートを受けることで、より確実な申請が可能になります。事務所では、ものづくり補助金を活用したAI導入の申請をサポートしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
※ものづくり補助金 19次公募の実施が決まりました。公募日などの詳細は、決まり次第当ブログにてご紹介します。
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